「早く給食の時間にならないかなぁ」
2時間目あたりからソワソワし始め、4時間目終了のチャイムが鳴ると、我先にと手洗いを済ませ、班ごとに机を向かい合わせる。
今日は、心待ちにしていたコーヒー牛乳の日なのだ。
小学生の頃、月イチ程度で出てくる給食のコーヒー牛乳が楽しみで仕方なかった。正確に言えば、「粉末のコーヒー牛乳の素でつくるコーヒー牛乳」のことだ。
飲み飽きた牛乳をたちまち甘い飲み物へと変えてしまうこの魔法の粉が大好きで、献立表をチェックしては、赤ペンで花マルをつけていた。
いつもは脇役の牛乳が、この日ばかりは主役に変身する。牛乳が苦手な友だちでさえ、顔を輝かせる。運悪く休んだ同級生のぶんを巡って、熱いじゃんけん大会が繰り広げられることもあった。
お待ちかねの給食の時間。トレーの上のビン入り牛乳にそっと寄り添う、牛のイラストが描かれた小さな袋。
牛乳があふれてしまわないよう、あらかじめ一口飲んでから、小袋の封を切って茶色い粉末を投入する。
…ザザーッ、カチャカチャカチャ。
ビンを目の高さに持ち上げて溶け具合を確認しつつ、先割れスプーンで入念にかき混ぜる。同級生の中には、ビンの蓋を元に戻し、バーテンダーさながらにシェイクする猛者もいた。
「うまく混ざったー」「コッペパンまでおいしく感じるね」「毎日出てくればいいのに」
教室のあちこちで明るい声が弾け、まるでお楽しみ会みたいな雰囲気だ。みんなが笑みを浮かべ、それぞれ自分のつくったコーヒー牛乳を飲み干した。
最後にビンの底にわずかに残った粉を、名残惜しい気持ちで口に運ぶ。ジャリジャリしてやたらと甘かったけれど、それもまた何とも言えずおいしかった。
給食にコーヒー牛乳の素が出てくると、一日中ゴキゲンだったあの頃。
一緒に無邪気な時間を過ごした同級生たちはどうしているだろう―?
大人になった今もふと思い出しては、懐かしさで胸がいっぱいになる。
本エピソードは、AGF®パートナー ブルーバード さんの体験を基に執筆しました。
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