コーヒーの思い出エピソード
2020/11/25

昔も今も、銭湯のお供はコーヒー牛乳

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みちょん さん

私の原風景のひとつは、「生まれ育った街の銭湯」だ。

子ども時代を過ごした実家の近くには、昭和を色濃く残す銭湯があった。
もちろん家に内風呂はあったけれど、銭湯好きの父親の「よ~し行くか!」という一声で、休日の夕方などに家族揃ってよく出かけていた。

住宅街に佇むその銭湯ののれんをくぐると、昔ながらの木札の下駄箱がまず目に入る。飴色に艶めく番台の先に脱衣所が広がり、革張りのマッサージチェアやアナログ体重計、コイン式ドライヤーといったレトロなモノたちが誇らしげに並んでいた。

高窓のついた浴室には、雄大で美しい富士山のペンキ絵。私は立ち昇る湯気を見上げながら、湯船の中で足をぐーんと伸ばす。
「ふぅ~、ごくらく、ごくらく」
母の口真似をして、家では味わえない開放感に浸った。

ジェット風呂、バイブラ風呂、薬湯。全部のお風呂を制覇して、私はすっかり茹でだこ状態。次なる目的は、キンと冷えた瓶入りのコーヒー牛乳だ。
脱衣所の隅にある4面ガラスの冷蔵庫から迷わず1本取り出し、お会計を済ませるやいなや、紙のフタを爪でカリカリと引っかけて開ける。

のんびり回転する天井扇の下で、一気にゴクゴクゴク…
「…ぷはーっ、いきかえる!」
火照った体を通り抜けていく冷たい感覚。ほのかな苦味がもたらすスッキリ感もたまらない。 ふと気付けば、同様にコーヒー牛乳を楽しむ人の小さな輪ができていた。不思議な連帯感が生まれ、誰からともなく笑みを交わしあう。何とも心地よい瞬間。

「おやすみ、またね」
帰り支度をしている私に、番台係のおばちゃんは、そう声をかけてくれた。自分にもうひとつの家ができたような気がして、無性にうれしかった。

あれから約20年。
今は実家から離れて暮らしているけれど、「ちょっと疲れたな、癒されたいな」と思ったら、近場の銭湯に足を運ぶ。
時代や場所が変わっても、私にとっての湯上がりの一杯は、やっぱりコーヒー牛乳だ。あの分厚い瓶が唇に触れるたび、子どもの頃の懐かしい記憶がよみがえり、無邪気であたたかな気持ちになれる。

体の疲れと一緒に、ココロも回復させてくれる銭湯という空間。
…そういえば、最近忙しかったなぁ。今度の週末、よ~し行くか!

本エピソードは、AGF®パートナー みちょん さんの体験を基に執筆しました。

 

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