コーヒーの思い出エピソード
2021/01/15

「頑張れ」という言葉の代わりに

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sasami さん

高校入試が目の前に迫った中3の冬。
私は、受験勉強のラストスパートにかかっていた。

いわゆるすべり止めは出願せず、受けるのは本命の第一志望校のみ。それだけに、「落ちたらどうしよう」「確実に合格しなければ」という不安と焦りが日ごとに募っていった。

そんな感情を打ち消すには、勉強に集中するしかない。私は、寝る間も惜しんで自室の机に向かった。
実家は雪国だったから、冬の夜の寒さときたら体の芯がきしむほど。かといって暖房を効かせすぎるとたちまち眠気が襲ってくるので、吐く息が白くならない程度の室温に抑える。
大きなひざ掛けで足元まで覆ってはいても、参考書をめくる指先はやっぱり冷たい。カーテンの隙間からは、しんしんと降り積もる雪が見えた。

…トン、トントン。
時計の針が午後9時を回った頃、ノックの音が響く。
ひと息つきたいタイミングを見計らっていたかのように、淹れたてのホットコーヒーを手にした母がドアから現れた。寒々とした部屋の中に、あたたかな湯気と芳ばしい香りがふわりと広がる。 「ちょうど飲みたいと思っていたところ!」
「ふふ、息抜きも大事だよね」
母は参考書の隣にコーヒーを置いて、あえて受験の話には触れずにそう笑った。

きっと母は、私がプレッシャーに押しつぶされそうなことを察していたのだろう。だから「頑張れ」という言葉の代わりに、1杯のコーヒーでエールを送ってくれたのだ。
マグカップを両手で包むと、コーヒーのぬくもりと一緒に母の愛情がじんわりと伝わってきた。どんな言葉よりも勇気づけられ、私は再び机に向かった。

母のサポートのおかげもあって、本命の第一志望校に無事合格。高校生活では、今につながるたくさんの出会いや経験に恵まれ、充実した日々を過ごすことができた。

私にとって高校受験は、人生で初めての岐路だった。
母からすれば、つい口出ししたくなるシチュエーションもあったと思うけれど、私を信じて見守ってくれたことに心から感謝している。

あの時、言葉にしないやさしさをありがとう。

本エピソードは、AGF®パートナー sasami さんの体験を基に執筆しました。

 

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