コーヒーの思い出エピソード
2021/07/16

人生最高のカプチーノ

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kuukai さん

旅先で味わったカプチーノが忘れられない。

数年前、妻と連れ立ってイタリアとオーストリアの2か国を旅行した。日本からの直行便があるイタリアのミラノを出発点に、ベネツィア、インスブルック、ザルツブルグ、ウイーンといった都市をバスでめぐる旅だ。

そんなバスツアーのちょうど中間地点、オーストリアとの国境に隣接する北イタリアの街コルティーナ・ダンペッツォで人生最高の一杯に出会った。

アルプスの一角をなすドロミティ山塊に囲まれたその街は、ヨーロッパ有数の山岳リゾート地。1956年に冬季五輪の開催地となり、2026年には70年ぶりに2度目の聖火が灯るという。夏は避暑地としても人気で、この時も世界中から観光客が集まっていた。雄大な自然と洗練された文化が美しく調和し、どこをとっても絵葉書のようだった。

「あら、ここ素敵なお店ね」
妻がふいに声を弾ませた。視線の先は、石畳路にテラス席が広がるカフェがあった。
さっそく瀟洒なエントランスをくぐり、カマーベストを着た女性店員に「Due cappuccino per favore(カプチーノを2つください)」と身振り手振りを交えてオーダーしてみる。すると、白い歯をのぞかせて「Si(はい)!」と小気味よい返事。ふと立ち寄った店で、こうして現地の人とやりとりするのは、旅の醍醐味のひとつだ。

しばらくして、ふわふわの冠を誇らしげにまとったカプチーノが運ばれてきた。
厚みのあるカップを慎重に傾け、今にもあふれ出しそうなミルクの泡を口に含む。まろやかな甘さが舌の上で溶けたと思ったら、次の瞬間にエスプレッソのほろ苦さが追いかけてくる。そして、飲み進めるにつれてミルクとエスプレッソが混ざり合い、味わいがグラデーションのごとく変化していった。
「本場の味はやっぱり違うなぁ!」「ね、驚いちゃうわね。はじめて体験するおいしさね」
まるで宝物を発見したような興奮を覚えながら、カップの底に残った泡をスプーンですくう。名残惜しい気持ちで口に運び、最後の余韻をゆっくりと堪能した。
「Buono(おいしい)!」。さきほどの女性店員にそう伝えると、彼女は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた。

飲み慣れているはずのカプチーノの本当のおいしさに触れ、その感動を妻と共有できた旅。
異国情緒に満ちた景色も、歴史的な建造物もどれも印象に残っているが、コルティーナ・ダンペッツォのカフェで出会った一杯は、特別な思い出として心のアルバムに綴られている。

本エピソードは、AGF®パートナー kuukai さんの体験を基に執筆しました。

 

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